グリセリンフリー化粧品でもニキビが治らず毛穴全開。というご相談
- ネットでグリセリンがニキビを悪化させると知り、グリセリンが入っていない○○のライン使いしていますが、保湿が全くなく、毛穴は全開で乾燥し、フェイスラインのニキビは悪化してきてます。
- ニキビケアと呼ばれてる物、グリセリンフリー、敏感肌用、セラミド、アミノ酸、オールインワンなど、何を使っても今でも常に顔にニキビがあり、1個治れば3個出来る感じで繰り返し。
- ディフェリンゲルなどの塗り薬は全て効かず、ニキビが少ない時もニキビ跡が気になります。グリセリンフリーなど化粧水も様々な種類を試しましたが、なんとかこのニキビ肌を改善できないでしょうか
- 大学1年の秋からニキビができ始め、どんどん悪化。ビタミン入りの化粧品やグリセリンフリーの化粧水を使ってみたり、クレンジングや洗顔を変えたりしました。ケミカルピーリングでも変化はありません。
最近流行しているようで徐々にご相談が増えています。化粧品とニキビの誤解も伴いますので、ちょっと長め。「長期的にニキビをくり返す方」が対象です。
もくじ
ニキビができるプロセス
ニキビは肌表面のバリアが「毛穴をふさぐ」→「皮脂が外に出れず」「酸素が嫌いで皮脂が好きなニキビ菌」により炎症
と言ったプロセスです。
「グリセリンフリーはニキビに良い」とされる理由
たどれば「複数種の保湿剤をニキビ菌に与える→グリセリンは他より増えた→グリセリンでニキビが悪化する」というシナリオ構成の話が広まっているようです。
この手の話法は読むと不安になりますよね。また実感として「皮脂が不快」なケースでは、「しっとり感」も不快に感じることもあるでしょうし「保湿はニキビの原因」という人もいます。そして連想的に「グリセリン無配合はニキビに良い」というイメージもできるのでしょう。
ではなぜニキビ菌が増えないはずのグリセリンフリー化粧品でも「良くならい」、そして「かえって肌の状態が悪化」ということにもなるのか?
「グリセリンフリーでも良くならない~悪化した」の理由1
「健康な状態の肌」の条件は様々ありますが、「身体を守るバリア」そして「見た目にキレイ」を兼ね備えた状態は
・正常なバリア構造
・常在菌と悪玉菌のバランス
・これらが生まれ変わりながら「維持」できている
などが重要です。
健康でキレイな肌では、表皮細胞をゆっくり分解しながら入れ替えてバリアを作り、肌表面は弱酸性を維持します。(参照:きれいな肌とは)
これで善玉菌が増えやすく、悪玉菌が増えにくいバランスとなり、「善玉菌が増えやすい→健康なバリア→善玉菌が増えやすい→健康なバリア」といった「サイクル・循環」が続くのが良い状態です。
代表的な善玉菌の表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗からグリセリンを作り、肌を保湿しています。またそのグリセリンを脂肪酸にも作り替えるなどしています。元々「グリセリンが肌に存在すること」を心配する必要はありません。
逆に肌のバランスや循環を意識せず、それ以前より肌を乾燥させてしまった場合、バリアは急いで作られ、「毛穴をふさぐ→ニキビ」や、「乾燥→毛穴が目立つ」などになるのは不思議なことではありません。
参照:皮膚細菌によるグリセロール発酵により乳酸が生成され、皮膚バリア機能に関連する遺伝子の発現レベルが上昇する
「グリセリンフリーでも良くならない~悪化した」の理由2
またニキビ菌にも誤解が多くあります。
通常状態の肌・毛穴のニキビ菌は無害なだけでなく、むしろ肌にとって必要な菌です。
元々が嫌気性(酸素で死滅する)なので、毛穴に住んでいます。そこで皮脂腺から出てくる皮脂を、肌表面の保湿をする脂肪酸につくりかえ、肌を弱酸性に保つ手伝いをしてくれてもいます。
毛穴がふさがるのは「急いでバリアを作る状態」の結果です。
それまでより保湿を不十分になった場合、乾燥が生じ、バリアは荒れ→毛穴がふさがることも増え→ニキビの悪化や長期化、他の毛穴トラブルの併発・・・となるの不思議なことではありません。
“C. acnes(ニキビ菌)の存在だけでは、にきびの発生を説明することはできない。健康な毛包と罹患した毛包の両方に存在し、C. acnesの相対的な存在量の変動が観察された違いを説明できる可能性も同様に低いと思われます”
参照:アクネ菌の病因と抗菌薬感受性におけるバイオフィルム形成の役割
本来実験からわかるのは「グリセリン配合化粧品は良くない」という結論ではなく、「ニキビになった毛穴に高濃度のグリセリンを注射するのは良くないかも」あたりだと思われます。
(参照:美肌育成に欠かせないニキビ菌)
「グリセリンフリーでも良くならない~悪化した」の理由3
これらも踏まえ、重要な点として「何が問題か?」の設定も重要です。
ニキビは「肌表面のバリア・皮脂・ニキビ菌」で構成されます。だから「ニキビ治療」は、バリアの除去や皮脂抑制や除去、殺菌などを行います。グリセリングリー化粧品は、「超消極的な抗菌剤使用」程度に位置付ければいいかと思います。(あくまでイメージですが。)
それでその時々のニキビは治療できるとしても、ニキビの「くり返し」が終わるかは別問題です。「ニキビのくり返し」は「肌全体のバランスや循環」を、正常な状態と循環に回復し、維持する必要があります。
その時々は治せても、バリアも皮脂もニキビ菌も作られ続けています。入れ替わるこれらのバランスが崩れれば、またニキビができてしまうからです。
(参照:ニキビが治りきらない。どうすれば?)
過激な治療ほどではありませんが、「グリセリンとニキビ菌だけ」に意識を向けてしまうと、「全体のバランス」や「循環」は忘れられがちです。そのため他のニキビ治療やニキビケアと同様に、バランスをさらに崩してしまう場合、ニキビの悪化や、他のトラブルの併発はありえます。
とはいえグリセリンフリーの化粧品が「ニキビの原因」というわけでもなく
上記はあくまで「グリセリンフリー化粧品でニキビが良くなるはずなのに、うまくいかなかった・悪化した」ケースの説明です。
化粧品自体も薬品のような「作用・副作用」はなく、またグリセリンは基材の一部にすぎません。他の治療も並行していれば、それらの影響もあります。
化粧品をグリセリンフリーに変えて悪化した場合なら、「その前と比べ保湿力の低下→バリアの荒れ→毛穴がふさがる」は考えられますが、そもそも慢性的なニキビは、それ以前の「元の肌質」「元の素肌の状態」や「それに至る経緯」の問題があります。
化粧品の成分の話は「効果の過剰宣伝」と、逆の「ネガティブ広告」も多くあります。(オイルフリーや活性剤など「この成分は怖い→この商品は安心」などのパターン。)
本来、肌をきれいにするために必要なのは、肌の仕組みや肌の扱い、化粧品で「どうケアをするか?」などです。化粧品自体に過剰に期待や不安を抱くと、実際とイメージでズレが生じますし、「(短期的に)感触が良くても、(長期では)肌に悪い」など実感を伴う錯覚もあります。「基準」として、肌のバリア機能の理解は重要かと思います。
(参照:「ニキビに効く成分の化粧品を教えて」というご質問)
グリセリンフリー化粧品でも解消しないニキビは
肌を健康でキレイにするには、肌の仕組みや役割を理解し、これを正常に回復・維持させることが必要になります。
グリセリンフリーにすることで、これらを実現できる場合はそれでいいのですが、うまくいかない・かえって悪化するなどの場合、肌やスキンケアについて、ある程度でも理解しておくことから始める方がいいでしょう。
ご相談はカウンセリングフォームから。
私たちもあなたと同じように、悩んでいました。でも今は...
2024年9月26日12:30 / 投稿者:kazuyuki terada